2016年8月23日 火曜日 雨
十五従軍征 八十始得帰
戦争の悲惨をうたった、最も古い五言詩の一つ(中国漢代の古詩)である。(一海知義 漢詩一日一首 平凡社 1976年、p346)
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十五從軍征 無名氏
十五従軍征 十五にして軍に従いて征(ゆ)き
八十始得歸 八十にして始めて帰(かえ)るを得たり
道逢郷里人 道に郷里の人に逢(あ)う
家中有阿誰 家中に阿誰(あすい)有りや
遙望是君家 遙かに望む 是れ君が家なり
松柏塚纍纍 松柏 塚(つか=墓)累累たり
兎従狗竇入 兎は狗(いぬ)の竇(あな)より入り
雉従梁上飛 雉(きじ)は梁(はり)の上より飛ぶ
中庭生旅穀 中庭(ちゅうてい)には旅穀(りょこく)生じ
井上生旅葵 井上(せいじょう)には旅葵(りょき)生ず
烹穀持作飯 穀(こく)を烹(に)て持って飯(はん)を作り
採葵持作羮 葵(き)を採(と)りて持って羮(こう・あつもの)を作る
羮飯一時熟 羮飯(こうはん)一時に熟すれども
不知貽阿誰 知らず 阿誰(たれ)に貽(おく)るかを
出門東向望 門を出(い)でて東に向って 望めば
涙落沾我衣 涙落ちて我が衣(い)を沾(うるお)す
訓み下しは一海さん(同書、p345-346)より。
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補注
雑穀(旅穀)・・すぐに飯に炊けるのだから、ヒエ・アワ・キビの類いか。なかでもヒエ(イヌビエ)は強力な雑草だと思っていたが、耕さないかぎりヒエの強大なものは生えないのには驚いた。ロータリー耕耘したマルチ畝や、鍬で耕した畝には巨大なヒエが急激に繁茂してくるのに対し、草生栽培や耕作放棄地などの不耕起圃場(去年の春以来耕していない畑)では大きなヒエが生えてこないのである。(もちろん、麦や米はなかなか野生化できないことを経験している。アワ、キビに関しては、未経験のため、今後の課題です。)
野草(旅葵)・・すぐにスープにできるのだから、野菜としても食べられる野草、たとえばセリ、ニラ、などの類いか。ハコベなどの春の七草は野菜としても食べられていたとも書かれている。古代の食生活に関して、具体的には今後の勉強を待つ。(前回紹介したように、ウグイスといっても中国と日本では違ったりするので、中国漢代にどのような飯やスープが食されていたか、もう少し専門的な書物を見てみたいと考えている。もちろん、日本の昔のこともわかればありがたい。)
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