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ノーサンガー僧院(1):言葉の物化 vs 話し手と聞き手の相互作用

2017年2月24日 金曜日 雪

惣谷美智子 ジェイン・オースティン研究ーーーオースティンと言葉の共謀者たち— 旺史社 1993年

Jane Austen, Northanger Abbey, first published 1818, published in Penguin Classics, 1995, this edition reissued with new Chronology and updated Further Reading 2003.

オーディオブック: Classic Literature Audiobooks
Jane Austen, Northanger Abbey, performed by Anna Massey, 1989, 2008 BBC Audiobooks, Ltd., published by Brilliance Audio. 7 CDs, 7:44

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ノーサンガー僧院:「語る人間」としての俗物達

補註 主人公とプリンスを主な構成員とする非俗物と、それを取り巻く俗物達の間で、どういう基準で一線を引くのか? 明確に言葉で表現してみたい。今は、宿題とする。

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言葉の物化 vs 話し手と聞き手の相互作用

補註 「物化」に関しては、廣松渉氏の哲学本でしっかり勉強した過去があるが、そうしっかりとでもなかったのか、言葉で今すぐ言い表すことができない。いわんや惣谷美智子氏が「物化」という言葉でどのような意味合いまでを包含させているのか、具体的に把握できていない。少し長い目で見ての宿題とさせていただく。

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ノーサンガー僧院:「語る人間」としての俗物達

俗物達の中にはアレン夫妻のように善意はあるものの、その世界の切り取りの相違、つまり異言語の使用によって、主人公を孤立させる者達がいる一方、自分たちの世界に強引にキャサリンをからめ取ろうとする者もいる。(惣谷、同書、p212)

 愚によって頑ななまでに密に織り合わされた俗物達の言葉の織物、それは「ノーサンガー僧院」という作品世界の背景となって厳然と控えながら、多少、物足りなさを感じさせなくもない主人公の肉付けをし、また、この作品の核となるヘンリの言葉を対比的に浮き彫りにしていくのである。(惣谷、同書、p213)

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ノーサンガー僧院:「語る人間」ヘンリ・ティルニー

ヘンリという、洗練されてはいるが、ともすれば自己暴露的な衒学的余韻を響かせる性癖のある話者は、キャサリンの、たとえば単純・素朴な、そして明らかに話者とは異なる他人の固有の視野、世界の中に入り込み、自己の言葉を他者の領域で構成することができるからである。少なくとも、主人公と俗物達との「言葉の物化」に陥った関係においては不可能だった、話し手と聞き手の相互作用が、ここでは可能となる。(惣谷、同書、p218)

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補註 バースについて ウィキペディアによると・・・

バース(Bath)は、イングランド西部、サマセットにある単一自治体(unitary authority)のバース・アンド・ノース・イースト・サマセット(Bath and North East Somerset)内の都市である。この地方最大の都市である港町ブリストルから24km内陸に位置する。

湧出温度45℃の三つの源泉から供給される温泉で著名であり、 イングランド有数の観光地である。1978年に温泉が閉鎖されて以来、 温泉施設跡を見ることしか出来なかったが、2006年に市内中心部に温泉を利用した総合スパ施設サーメ・バース・スパが作られて、再び入浴できるようになった。

エリザベス1世の時代に温泉地として復活、とくに18世紀のジョージアン時代になってロンドンの貴族や富裕な階層の保養地として大規模に再開発され、近隣の土地から産出した石灰岩による多くの美しい建物群が建造された。

なお、ローマ時代は Aquae Sulis と呼ばれていたが、アングロ・サクソン人はこの町を温泉にちなんで Baðum などと呼んだ。これが現在の町の名前の由来である。Bath という町の名前を英語の bath という語の語源とする俗説があるが、実際は温泉があるから付いた地名であり、順序が逆である。<以上、ウィキペディアより引用終わり>

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「ノーサンガー僧院」執筆当時、ゴシック・ロマンスが一世を風靡していた。(惣谷、同書、p215)

補註 ゴシック小説 ウィキペディアによると・・・

ジェーン・オースティン『ノーサンガー・アビー』は、ゴシック小説好きな主人公の少女が中世の僧院だった屋敷に招待されるという、ゴシック小説のパロディーの要素も組み込まれている。

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ゴシック小説(ゴシックしょうせつ)とは18世紀末から19世紀初頭にかけて流行した神秘的、幻想的な小説。ゴシック・ロマンス(Gothic Romance)とも呼ばれ、その後ゴシック・ホラーなどのジャンルも含むことがあり、今日のSF小説やホラー小説の源流とも言われる。

イギリスの作家ホレス・ウォルポールの『オトラント城奇譚』(The Castle of Otranto,1764年)がゴシック小説の先駆とされる。・・・(中略)・・・これらの作品は「恐怖派(The school of Terror)」とも呼ばれ、それまでの幻想的な作品が信仰や伝承、迷信の世界を描いたのに対して、超自然的な驚異にまつわる恐怖やサスペンスを主題にしており、近代小説の手法によるロマンスとも言える。多くがイギリスではない大陸を舞台にしているところも特徴の一つである。ウィリアム・ゴドウィンの娘メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』(1818年)では人造生命という、純粋に空想の所産による恐怖を生み出した点でも画期的である。 ・・・(中略)・・・ ゴシック小説定番のモチーフは、怪奇現象、宿命、古城・古い館、廃墟、幽霊などであり、それらは現代のゴシック小説でも継承されている。 <以上、ウィキペディアより引用終わり>

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