ストルガツキー兄弟 ストーカー 深見弾訳 2014年新版 ハヤカワ文庫
2015年1月10日 土曜日 読了。
原作は「路傍のピクニック」か「道端のキャンプ」。1972年。キャンピングカーで旅をしている連中が、ある一夜をどこかの道端でキャンプをして立ち去ったあと、そこに残していった塵芥は、野の虫たちにとってどんな意味があるのか? この作品は、キャンプの跡(ゾーン)の塵芥(諸諸の不可解な事物)をめぐって右往左往する虫たち(人間)の物語です。(同書、解説p288)
ゾーンをめぐって様々な人間がそれぞれの立場で、既成の観念に縛られて行動する中で、生きるために命がけでゾーンに潜入し、ブツを運びだすストーカーたちこそ、実は、心の底でもっとも人間的な苦悩を、そしてよろこびを味わっているのです。(同書、解説p289)
彼らは二重の危険を冒す。まずは不法侵入、そしてゾーンに立ち入れば得体の知れない気配の影響を受けて健康を害し、彼らの子どもはしばしばミュータントになるという。けれども、ただ貧しさからだけではなく、人生の次元を超えたこのゾーンに抗いようもなく惹きつけられ、彼らはそこに不条理な畏怖と敬虔の極を見いだしている。(西谷修「アフター・フクシマ・クロニクル」p60より引用)
世界で最初の核惨事は、1957年に旧ソ連の南ウラルのキシュテム市付近(秘密都市チェリャビンスク-65近郊)で起こった。極秘にされていたが、75年にイギリスに亡命した科学者ジョレス・メドベージェフが「ウラルの核惨事」を発表して知られるようになった核廃棄物処理場の事故だ。ただ、SF作家のストルガツキー兄弟がこれを題材に小説を書いた。「路傍のピクニック(ストーカー)」という。(西谷修 アフター・フクシマ・クロニクル p169 ぷねうま舎 2014年)
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きっかけは西谷修さんの「夜の鼓動にふれる」で紹介されていたことから。
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