読書ノート

癌の標的化治療のストラテジー: 今後の方向性

2019年3月31日 日曜日 曇り

第一三共社とアストラゼネカ社が癌に対する抗体治療薬の開発で提携するというニュースが大きく報道されている。具体的には日経ウェブその他へリンクを貼っておきました こちらのページを参照下さい。

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補註

さて、例えば乳癌あるいは肺癌で、良い標的(抗原など)が2つ以上見つかったとしよう。そうすると、次のステップは何だろうか?

私の持論: 次は、これら2種の標的抗原を両方発現している癌細胞だけを殺す標的治療法の開発がキーとなる。

A薬とB薬とが同時に一つの癌細胞に対して作用した時にのみ、殺細胞効果を発揮するようなしくみを開発する。いろいろな候補がすでにあるのだが、もちろん新しいしくみも試してみたい。どれが最も副作用なく効果が高いかという基礎研究はやり甲斐がある。

重要な生体組織や幹細胞などの正常細胞では、たとえ一方の抗原が多少発現していたとしても、もう一方の抗原が発現していないので、AB治療で被る副作用は最小限に留められるはずである。

癌の種類は多いが、私が今まで開発してきたような合理的なスクリーニング法を用いれば、それぞれの癌に対して治療効果の高い標的抗体ないし標的治療システムを比較的容易に樹立することができる。それぞれの患者さんの癌細胞にマッチする2つ(ないし3つ)の治療剤を組み合わせることによって、副作用の非常に少ない、効果の高い治療薬とすることができる。

現状では1剤単独使用薬の開発がようやく途につきつつある道程であるが、これからの進み方は速いだろう。前へ!

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補註

固定ページの Essay の欄に以下のような記載とリンクを加えてみた。今後は時々追加していきたい。

私の研究:癌に対する標的治療法の開発・その他

今後の方向 2019.03.31

坑TROP2抗体の臨床治験

肺癌プロジェクトの現在地点

標的化抗体探索の歴史

関連して: ニュースなど

癌治療薬の開発が加速 2019.03.31

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