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愛着は、高度な文化や社会を支える高次元の仕組みへと進化を遂げた。

2020年3月23日 月曜日 曇り

岡田尊司 愛着アプローチ 医学モデルを超える新しい回復法 角川選書 2018年

振り返る力と相手の立場で考える力

愛着という仕組みは、本来こむずかしい理屈で成り立つ仕組みではない。哺乳動物に共有される子どもを守り、育てるための仕組みである。理屈など、もともとはなくても立派に機能する仕組みなのである。  したがって、動物の母親ならいかに子育てするのかということで考えてみればいい。(岡田、同書、p140)

 ・・ところが、大脳の進化とともに起きた子ども時代の長期化に伴い、親子関係も極めて長い期間維持されるようになった。親子関係は生涯続くものとなったが、それは愛着が乳幼児期に終わるものではなく、成人になっても機能しつづける仕組みに変わったことに呼応している。  愛着が長く維持される仕組みは、子ども時代が長くなることによって、つまり、大脳が大きく進化したことによって、もたらされたのだとするならば、大脳の進化の産物である言語を介した高度なコミュニケーションや反省的な思考の獲得とも、ある意味不可分であり、少なくとも並行して起きた現象だと言える。  ここから愛着は原始的な仕組みどころではなく、人類だけがもつ、高度な文化や社会を支える高次元の仕組みへと進化を遂げたと考えられる。・・愛着は、愛と呼ばれる高度に文化的で、社会的な営みにまで達することができたのである。永遠の愛(愛の永遠性)という概念は、まさに、そこに起源を持ち、人類の進化の真骨頂がそこにあるとも言えよう。・・・(中略)・・・こうしたことから、動物には認められない要素が、人間が安定した愛着を維持するためには必要になってくる。そこにかかわってくるもっとも重要な要素は、まさに前頭前野の重要な機能でもある、自分を振り返る力や相手の気持ちを汲み取る能力である。(岡田、同書、p141-142)

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同じ岡田さんの https://quercus-mikasa.com/archives/10606 「良い安全基地とは?」もご覧ください。

同じく岡田さんの愛着障害の脅威 https://quercus-mikasa.com/archives/10718 などもアップしています。

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