国文学古典

竹取物語:発想とストーリーとで、人を引き込んでしまう。構成に自信あればこそだ。

2021年2月17日 水曜日 曇り

星新一訳 竹取物語 角川文庫

・・寓意のないのがいい。作者の才能と人柄のせいだろう。ご自由にお考え下さい。お考えにならなくても、けっこうです。面白い話は、決してなにかを押しつけない。

 娘を嫁にやるのも、天に帰すのも大差あるまいと思うが、それは現代でのこと。姫はそのまま家に住み、特定の男性が通ってくる形でもよかった時代である。(星、同書、p136)

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・・訳していて気がついたことだが、かぐや姫が天空の外の人であった点を除けば、なんの飛躍もない。竹からの出生、羽衣などは、それに付随したことである。・・『竹取物語』では、超自然的な発想はひとつだけで、あとは人間的なドラマである。だから、すなおに面白い。そのノウハウを知っていて書いたのだから、この作者はなみなみならぬ人物だ。しかも、前例となる小説がなかったのだから。・・・(中略)・・・また、描写を極端に控えているのも、特色である。・・姫がいかに美人かの描写もなく、思いを寄せる男性たちの年齢、顔つきも不明。心理描写だって簡単なものだ。最後の章など「泣く」の表現が多出する。  つまり、発想とストーリーとで、人を引き込んでしまうのだ。構成に自信あればこそだ。描写を抑えると、読者や聞き手は、自分の体験でその人のイメージを作ってくれ、話にとけ込んでくれる。  そのパワーが失われると、季節描写や心理描写に逃げ、つまらなくなる。・・・(中略)・・・  蓬莱など、中国の神話を引用しているが、作者は信じていないし、それは聞き手も同様だったからだろう。仏教も、あまり関係ない。先駆者というものは、時代に恵まれるといえそうだ。(星、同書解説、p137-139)

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