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時には、岸壁の上のオオカミみたいに、次のステップは意味を持たないことを認めなければならない。

2021年3月6日 土曜日 吹雪

エリ・H・ラディンガー 狼の群れはなぜ真剣に遊ぶのか シドラ房子訳 築地書館 2019年 (原題は Elli H. Radinger, Die Weisheit der Wölfe)

(補註: ウムラウトの入力は … option + u を押してから 「o」 = ö)

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・・オオカミの強みは、まず状況を現実的に評価してからその後の行動を決めることにある。まず立ち止まって状況を十分に考慮し、選択肢を比較検討するのがいいときもある。そしてときには、岸壁の上のオオカミみたいに、次のステップは意味を持たないことを認めなければならない。その場合、古いものを払い落として、新しくスタートする。

私が弁護士としてのキャリアをオオカミのために捨てたとき、そんな感じだった。大きな情熱と、公正を勝利に導くという愚かな希望を抱いて法学を学び、弁護士となったものの、職業生活における最初の三年間の現実に、どうしていいかわからなくなった。離婚問題、交通事故、刑事事件・・お役所仕事とフラストレーション。私が考えていたものとはまるで違う。ここで人生を概観して、残りの人生でもこの職業を続けたいか、と自問した。結局はかけがえのない人生なのだ。踏み車を降りたいと思った。

・・・(中略)・・・

いつも早急に決定する必要はない、と心に刻み込むのは大事だ。どうにもならない状況に思われることもある。そんなときは、まずは立ち止まって適切な瞬間が訪れるまで待てば、前進できる。

・・・(中略)・・・

粘り強さと忍耐は、私も持ちたいと願うオオカミの性質だ。私はあまり忍耐がないほうなので、渋滞したときなどオオカミをうらやましく思う。すぐに何もかも片付けたい性質の私は、イエローストーンで時間という概念を定義し直すことを学んだ。自然には独自のリズムがあって、私たちが急いでいることなど気にしない。

・・・(中略)・・・

・・木々に囲まれていれば、木々にとっての時間はぜんぜん違うことがわかる。古いナラの木を見るたびに、樹木の忍耐強さに感心させられる。ナラの樹齢は三〇〇年に近い。三〇〇年かけて生き、三〇〇年かけて死ぬ・・そう思ったとき、私の考えかたは変わった。世界はまったく違う時間枠で思考し、進行している。私のことは気にもかけずに。そう思うと気持ちが楽になった。(ラディンガー、同訳書、p146-149)

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