literature & arts

男は、それも愚鈍の男ほど、こんな危険なアルテミス型の女性に惚れ込み易いものである。

2021年3月16日 火曜日 晴れ

太宰治 御伽草子 カチカチ山 ちくま文庫版太宰治全集7

シャボン横丁さんの朗読で聴く。

https://www.youtube.com/watch?v=B8lL_ILSikw&ab

・・アルテミスは月の女神で・・こんな女に惚れたら、男は惨憺たる大恥辱を受けるにきまっている。けれども、男は、それも愚鈍の男ほど、こんな危険な女性に惚れ込み易いものである。そうして、その結果は、たいていきまっているのである。

疑うものは、この気の毒な狸を見るがよい。狸は、そのようなアルテミス型の兎の少女に、かねてひそかに思慕の情を寄せていたのだ。兎が、このアルテミス型の少女だったと規定すると、・・(太宰、カチカチ山、同書、p390)

**

補註: 星新一によると・・(星新一の口語訳・竹取物語 角川文庫 昭和62年)

・・太宰はウサギを美少女の残酷さのあらわれと見て、タヌキは中年(補註:37歳)のぶさいくな男とした。・・・(中略)・・・美しいが、やさしさがない。ギリシャ神話の三日月の女神まで持ち出すが、私の調べでは少し誤解があるようなので、その名は出さない(補註$)。・・・(中略)・・・ 後略で終わるなんえ珍しいが、太宰の「カチカチ山」についての新説である。「竹取」は、それより昔のお話。文芸の原点なら、こっちですよ。(補註#)(星、同書、p79)

補註の補註$ もちろん「カチカチ山」のアルテミスのことであるが、星新一が調べて、アルテミスをどのような神として捉えていたか、太宰の理解との歳などに関して大変興味深いところである。今後の読書によって見つけられたら報告したい。

ウィキペディアによると・・・ アルテミス(古希: ΑΡΤΕΜΙΣ, Ἄρτεμις, Artemis)は、ギリシア神話に登場する狩猟・貞潔の女神である。アポローンがヘーリオスと同一視され太陽神とされたように、後にセレーネーと同一視され月の女神とされた。また、闇の女神ヘカテーと同一視され、三通りに姿を変えるものだとも考えられた。・・・(中略)・・・オリュンポス十二神の一柱とされるが、本来のヘレーネス(古代ギリシア人)固有の神ではない。その名は古典ギリシア語を語源としていないと考えるのが妥当である。アルテミスは、ギリシアの先住民族の信仰を古代ギリシア人が取り入れたものと、現在の研究では考えられている。(<以上、ウィキペディアより引用終わり>)

**

補註の補註# 新釈の諸国噺や新御伽草子でたぐいまれな才能を発揮した太宰のことゆえ、「女性優位」の権化のようなこのかぐや姫を忘れてしまうことは無かったろうと思われる。ここでもまた、太宰の早世がが惜しまれる。

 

 

**

*****

*********************************

 

RELATED POST