culture & history

真保守・現実保守・生活保守と経済政策

2022年9月1日 木曜日

宮崎正弘 日本の保守 やまと魂をつくった思想の系譜 ビジネス社 2022年

経済問題の論戦は・・、大枠でとらえ直せばグローバリズムvs.ナショナリズムの衝突である。

国際化の現実を前に経済政策では、「新保守主義」の衣を着装したリベラル派が日米で大勢を占めるにいたった。 グローバリズムを前になおざりにされたのは経済主権だった。 この「経済主権」とは通貨を発行し、金利、為替を決める独立主権国家の権利のことだ。・・真保守は主権尊重が基盤にあるので、・・「国の個性」に立脚した経済構造の確立を唱える。

現況は真保守が現実保守に敗退気味なことである。

グローバリズムが勝って日本の主権は蔑ろにされた。・・日本はアメリカが決めたルールに従うことになり、郵政民営化はリベラルが混在した左派系保守がアメリカを後ろ盾に国粋主義的な人々を押しのけた。 日米経済戦争も、アメリカ側について法律の改正に動いたのは現実保守のグループであり、IR(統合型リゾート)からクリーンエネルギー問題でも譲歩につぐ譲歩をしてきた。日米構造協議、スーパー301条華やかなりし頃、真保守が死守したのはコメの自由化阻止である。コメは日本文化と伝統の中枢にあって、天皇家の行事の中軸である新嘗祭、大嘗祭のコメは国産であり、コメは聖域であると主張し、「国の個性」論を前にアメリカが譲歩した。

ともかく経済問題は現実保守が得意とする分野で、真保守が不得手な領域であるから隙を衝かれたかたちとなった。

現在の「保守論壇」なる場所の主流を占めるのは「新自由主義」という得体の知れない思想だ。

「不確かな明日のために確実な今日を犠牲にしない」というのは共産主義の脅威に対抗する反共の基本だが、保守はこの点で一致しているわけではなく、理想のためには今日の繁栄を度外視しても突き進むと唱える原理主義が真保守のなかに混在している。学界では、この混戦状況を「伝統主義」「復古主義」「新自由主義」などとファッションを取り替えるような皮相な議論に終始している。(宮崎、同書、p22−23)

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