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春興・春暁・春宵

2016年4月21日 木曜日

一海知義 漢詩一日一首 平凡社 1976年

春興 武元衡

楊柳陰陰細雨晴,殘花落盡見流鶯。
春風一夜吹郷夢,又逐春風到洛城。

楊柳陰陰 細雨 晴れたり,
殘花 落ち盡くして 流鶯(りゅうおう)を見る。
春風 一夜 郷夢を吹き,
又た春風を逐いて 洛城に到る。

訓み下しは一海さんより。

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春暁 孟浩然
春眠不覺曉 處處聞啼鳥 夜来風雨聲 花落知多少

春眠 暁を覚えず
処処 啼鳥を聞く
夜来 風雨の聲
花落つること 知る 多少ぞ

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留別王侍御維 孟浩然
寂寂竟何待,
朝朝空自歸。
欲尋芳草去,
惜與故人違。
當路誰相假,
知音世所稀。
祗應守索寞,
還掩故園扉。

王侍御維に留別す 孟浩然
寂寂(せきせき)として 竟(つい)に何をか待つ,
朝朝 空しく自ら歸る。
芳草を尋ねて去らんと欲するも,
惜しむらくは 故人と違わん。
當路 誰か相い假(か)さん,
知音(ちいん)は 世に稀なる所。
祗(た)だ應(まさ)に索寞(さくばく)を守って,
還た故園の扉を掩(と)ざさん。

(訓読は一海、p77より)

・・とすれば、うつらうつらと覚めやらぬ春の朝の詩一首も、そのうちにはおだやかでない心情が、あるいは居直りの心理が、あるのかもしれない。(一海、同書、p78)

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「春夜」蘇軾

  春宵一刻値千金    春宵 一刻 値千金
  花有淸香月有陰    花に淸香有り 月に陰有り
  歌管樓臺聲寂寂    歌管 樓臺(ろうだい) 聲(こえ) 寂寂(せきせき)
  鞦韆院落夜沈沈    鞦韆(しゅうせん) 院落(いんらく) 夜 沈沈(ちんちん)

昼間は女どもがにぎやかに遊んでいた邸の中庭(院落)のぶらんこ(鞦韆)も、今は静かにたれさがり、夜はしんしんとふけてゆく。 この詩、右のように訳したのでは、原詩のもつ余韻が消えてしまう。とくに第三句、第四句、これは余計な説明をくわえるより、
歌管 樓臺 聲 寂寂  
鞦韆 院落 夜 沈沈
と、中国語の孤立語としての性格をたくみに生かした、原詩のままでよむのがよい。(一海、同書、p81)

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