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土と日本人 農のゆくえを問う

2020年1月8日 水曜日 雪

山下惣一 土と日本人 農のゆくえを問う NHKブックス 昭和61年(1986年)

・・なにごとかと振り返れば、舅が顔色を変え、眼をむいていうには、・・「百姓があぜ道に小便する精神でどうするか。田んぼの中にしろ、大馬鹿者めが」・・私の村で実際にあったうそのような本当の話である。・・それほど土を大切にしていた。・・土を大切にしなければ収穫があがらない状況だったともいえる。土が痩せることは即、収量の減少につながり家計を圧迫したから、土を肥やすことのみが生活を豊かにする唯一の方策だったといえる。(山下、同書、p96-97)

未来を信じず農を営む貧しさ・・未来を信じ、土作りに汗を流し、自然の恵みに感謝し、子孫のためにせっせと木を植えて逝った父の生涯の豊かさに比べると、私たちの精神はまことに貧困だとつくづく思う。・・どんなに時代状況が変わろうと、農業は自然界が相手の息の長い仕事だから、未来が信じられなければ、とてもやれるものではない。未来が信じられなければやれない仕事を、未来を信じられない状況でやらねばならないのが今日の百姓の不幸である。(山下、同書、p129-130)

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