2020年10月28日 水曜日 快晴
昨日まででブドウの収穫を終え、今日は午前中、久しぶりのお休み。午後は推定総計・約1.5トンのシャルドネをワイナリーへ搬送しなくてはならないため、かなりの重労働となりそうだ。
さっき、市の農林課から電話があり、ご近所で熊の糞が見つかり、白ブドウの皮が入っていたとのこと。私のところのブドウの皮かも・・ということで心配して電話を入れてくださったようだ。醸造用ブドウは昨日ですべて収穫を終えたとはいうものの、私の畑に今も残っている生食用ブドウに関して、早く収穫してしまった方が良さそうだ。また、夕方薄暗くなってからの作業は厳に控えることとしたい。(今年の秋はお隣のNさんの飼われていた豚二頭が熊に食われてしまった被害があり、私たちにとっても非常に恐ろしく感じられるのである。)
**
ジェイムズ・サーバー傑作選1 鈴木武樹訳 創土社 1978年(原著は1923〜1945頃までの作品)(『ウィンシップ夫妻の別居』は、”Let Your Mind Alone” 『心はひとりのままでおけ』1937年から)
・・その笑いが、時計が進むにつれ、またふたりの口から出る言葉が鋭さと露骨さと辛辣さとを増すにつれて、ついには凍てついてしまったのだ。ふたりは『カミーユ』(補註1)を見てきた帰りだった。・・・(中略)・・・ところがマーシャの方は、グレタ・ガルボにすっかりいかれていたので、この映画にもすっかりいかれてしまっていた。彼女はあのガルボ崇拝者の大軍のひとりで、その恍惚ぶりたるや、ほとんど狂信と境を接していて、ときには狂気の一端にすら触れていたのだ。(サーバー、同訳書、p94)
・・ドナルド・ダック(補註2)の天才を見ぬけないとは、自分からすればもう決定的に、おまえがユーモアのない女だという証拠だ、と(ゴーダンはマーシャに)言った。そうじゃないかと(と、彼は言った)おれはいつも思っていた。これで(と、彼は言った)よくわかったよ。彼女はどうしても彼を殴りつけてやりたいという気持ちになったが、それはやめて、椅子の背に深くからだをあずけ、彼女に特有のあのモナ・リザのほほえみを浮かべながら彼を見つめたーーー原作に見られるような≪神秘の≫、というよりはむしろ≪軽蔑の≫ほほえみだ。ゴーダンはそのほほえみが大嫌いだったので、こう言った。ガルボがこれからどうなろうと、ドナルド・ダックはちょうどその十倍は偉大になるだろう、頭の中に脳みそのある人間ならだれでも、即座にそれを認めるだろう、と。こうしてウィンシップ夫妻がどんどんその調子で進むにつれて、双方の憤怒は膨れあがり、価値観は霞み、その結果ついに、マーシャはタクシーを拾ってひとりで家に帰り・・、彼の方は・・明け方ちかくに行きつけのクラブに現れる、という仕儀に立ち至った。(サーバー、同訳書、p96)
**
補註1 グレタ・ガルボ主演の椿姫『カミーユ』(1936年)
1936年 | 椿姫Camille | マルグリット・ゴーティエ役 | ニューヨーク映画批評家協会賞 主演女優賞受賞。ナショナル・ボード・オブ・レビュー主演女優賞受賞。アカデミー主演女優賞ノミネート。 |
補註2 ドナルド・ダック https://ja.wikipedia.org/wiki/ドナルドダック
ドナルド・フォントルロイ・ダック(英: Donald Fauntleroy Duck、通称:ドナルドダック)は、アヒルをモチーフにしたディズニーアニメのキャラクター。歴史: 1934年6月9日、シリー・シンフォニー・シリーズの一作品である『かしこいメンドリ』で初登場。この作品では脇役としての登場であったが、その独特なキャラクターから支持を集める。同年には短編映画であるミッキーマウスの短編映画シリーズの『ミッキーの芝居見物』にてミッキーマウスと初共演を果たし、同シリーズ『ミッキーと犬泥棒』では早くもピートと戦う役どころを演じている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ドナルドダック
*********************
補註 ドナルド・ダックが1934年、椿姫が1936年、『ウィンシップ夫妻の別居』は、”Let Your Mind Alone” 『心はひとりのままでおけ』1937年、ということで、当時の超人気キャラ対決である。
ところで1937年頃というと、日本では、小津安二郎の「淑女は何を忘れたか」・・私は、先日初めてこの映画を見ることができた。一方、グレタ・ガルボの映画では、グランド・ホテル(1932年)を見たことがある。一方、ドナルド・ダックの映画は一つも見たことがなく、残念ながら、ドナルド・ダックの天才を云々できる立場に私は立っていない。
**
**
*****
補註: 映画:グランドホテル: ウィキペディアによると・・・
さまざまな人物が1つの舞台に集いあい、それぞれの人生模様が同時進行で繰り広げられていくという、当時としては斬新なストーリー展開が大ヒットを呼び、第5回アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞した。
本作品の大ヒットを受けて、同様の手法を用いた映画作品がホテル・空港・港から駅、災害や海難事故に至るまで、さまざまなモチーフを元に製作されるようになり、この形式は以後「グランド・ホテル形式」と呼ばれ、群像劇映画構成のひとつの典型となっている。
本作品は、ヴィッキイ・バウムが1929年に発表した小説『ホテルの人びと(Menschen im Hotel)』をバウム自ら戯曲化したものを原作にしており、実際にあった有名会社の実力者と速記者とのスキャンダルを元にしているが、バウム自身も、自らの作品のために2つのベルリンの有名ホテルで客室係として働いていた。
この映画が評判になったのはMGMのドル箱スターが顔を合わせたことに主な原因があるが、映画としても巧い構成でつくられ、人生の縮図を端的に浮かび上がらせたのはなによりといえる。登場人物の絡ませ方と捌き方の巧さは舞台劇が土台にあるから当然としても、映像のつなぎ方は当時としては抜群で、悲惨なプロットが多い中でさまざまな人間模様をリレー・タッチで描いて面白さを盛り上げており、そのような印象は抑えられている。
なお、ガルボの台詞「私をほっといて(I want to be alone.)」はAFI(米国映画協会)の米国映画名台詞ベスト100の第30位に入っている。
補註: ガルボの “一人にして欲しい (I want to be let alone)”
“一人になりたい (‘I want to be alone)” vs “一人にして欲しい (I want to be let alone)” ウィキペディアによると・・・ (https://ja.wikipedia.org/wiki/グレタ・ガルボ)
だが、少なくとも私生活でのガルボは「一度も“一人になりたい (‘I want to be alone)” と言ったことはありません。“一人にして欲しい (I want to be let alone)” と言っただけです。この二つの言葉はまったく意味が違います」と語っている。
1. NYTimes 1990. A declaration often attributed to her was, “I want to be alone.” Actually she said, “I want to be let alone.”
2. Shapiro, Fred R., ed (2006). The Yale Book of Quotations. New Haven: Yale University Press. p. 299. ISBN 978-0-300-10798-2 2010年7月24日閲覧。
補註 ”Let Your Mind Alone” 『心はひとりのままでおけ』・・このサーバーの著書の題名もグレタ・ガルボの“一人になりたい (‘I want to be alone)” ないし “一人にして欲しい (I want to be let alone)”をもじっているのだ。1935年当時にガルボ人気がものすごいものであったことを物語っている。
**
補註 付録としてミッチーの画像をウィキペディアから引用: 『戸田家の兄妹』もいずれ見てみたい。
*****
*********************************