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神判におけるけがれを祓うことが法の起源であった

神判におけるけがれを祓うことが、法の起源であるように、それはまた禊(みそぎ)の起源をもなしている

古代法の特徴の一つとして、その法源に関する説話をもつということがあげられよう。法が神判の形式で行われ、聖なるものの維持のために、刑罰はそのけがれの祓除を意味するものとされた時代の法観念は、神話的な背景をもつものであった。わが国の「大祓(おおはらい)」が、よくそのことを示している。(白川、中国古代の文化、p136)

中国の古代の神話が、はなはだしく非体系的であるのは、このような諸族の伝承が、神話的な形態において統一される機会を、ついにもたなかったからであろう。秩序の制定者としての伯夷の神話をもつ姜姓諸族には、また秩序の破壊者としての、共工(姜姓の奉ずる洪水神)の説話を負わされているのである。(白川、中国古代の文化、p141)

方は人を殺してその屍を木に架け、呪禁(じゅごん)とすることを示す字である。そのような呪禁の対象とされる異族の邦をも、また方とよんだのである。(白川、同書、p143)

みずからの聖域を外部の邪悪から守るという考えかたは、どのような原始の社会にもあったと考えられる。その観念の根拠として、やがて神話が語られ、その神話がまた法源となって法的秩序を生む。中国の古代にあっては、その法源をなす神話を経典化することによって、それに絶対的権威を与えようとしたのであった。(白川、同書、p144)

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注: 呪禁(じゅごん) ウィキペディアによると以下の通り: 呪禁(じゅごん)とは、道教に由来する術(道術)で、呪文や太刀・杖刀を用いて邪気・獣類を制圧して害を退けるものである。呪禁の中でも特に持禁(じきん)と呼ばれるものは、気を禁じて病気の原因となる怨気・鬼神の侵害を防ぎ、身体を固めて各種の災害を防止する役割があった(『令義解』「医疾令」)。また、出産時にも呪禁が行われて母子の安産を図った。そのため、古代においては一種の病気治療の手段の1つとして考えられ、日本の律令制にも典薬寮に呪禁博士・呪禁師が設置された。早い時期に呪禁に関する職制は衰微していき、同じく道術の要素を取り入れて占いなどにあたった陰陽道の役割拡大とともに、陰陽師が呪禁などによる病気平癒のための術を行使するようになった。なお、呪禁職制衰退の背景には、奈良時代後期に続いた厭魅(えんみ)や蠱毒(こどく)に関わる事件との関連も指摘されている。

注の注:
weblio辞書より: えん み [1] 【魘▼魅・厭▼魅】妖術で人をのろい殺すこと。 「人に-せられて死す/菅家後集」
ウィキペディアより: 蠱毒(こどく)とは、古代において用いられた、虫を使った呪術のこと。蠱道(こどう)、蠱術(こじゅつ)、巫蠱(ふこ)などともいう。一説では、虫ではなく、犬や猫など様々な動物を用いた呪いをも総称して「蠱毒」(広義の蠱毒)と呼ぶ場合もあるという。

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