2016年3月29日 火曜日 晴れ
武田邦彦 科学者が読み解く環境問題 シーエムシー出版 2009年
循環型(リサイクル)社会の科学
リサイクルは資源の有効利用などを目的としているので、単なるリサイクル率ではなく、「リサイクルによって資源の節約になった量」を求める必要があるが、リサイクルに要した資源量を把握することは現実には不可能・・(武田、同書、p155)
物質循環が難しいのは、微量夾雑物と毒物汚染の問題を含むからであり、たとえば、化学工場で循環するラインから蓄積する物質を除去するのにきわめて大きな負荷がかかるのと同様である。(武田、同書、p156)
さらに高分子が劣化するのは原理的なものであり、それを防ぐことはできない。・・科学的に、使用中に高分子の劣化が起こるのは、二つの基本的な原因がある。一つはもともと高分子というものが劣化しやすいこと、もう一つは「耐熱性の高い高分子ほど高価なので、用途に応じてギリギリの耐熱性の材料が使用される」ことと、「射出成形などではサイクル時間を短くするために、許容される範囲いっぱいまで分子量を下げる」という工業的な理由による。(武田、同書、p156)
*****
天然資源が石油などのエネルギー資源と同等の資源寿命がある場合、リサイクルが可能な条件は、「天然に存在する状態から、人間が使用できる状態までにかかるエネルギーがリサイクルのエネルギーより多い場合」で、アルミニウムは・・市中に拡散したアルミ缶やアルミサッシを回収するときのエネルギーの方が小さいという特徴がある。(武田、同書、p167-168)
現実的にリサイクルが成立し、若干でも資源の有効活用になるのは、アルミニウムと貴金属であり、鉄や銅は条件によって成立することが分かる。つまり、国家規模のリサイクルシステムができる前から成立していた物質循環は科学的にも意味のあるものが残っていたと言える。(武田、同書、p168)
*****
**********