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ラプラス変換と逆変換で解く微分方程式

2016年4月9日 土曜日 曇り 雪解けなれど風強く舞って寒い 気温8度から5度

大村平 微積分のはなし 変化と結果を知るテクニック 上・下 日科技連 1972年 改訂版は2007年(私の持っているのは、上は改訂版2007年、下は初版1972年版)

こんな便利なものがあったのかーーーラプラス変換と逆変換で解く微分方程式

微分方程式が代数方程式に変わる 微分方程式にまっこうから取り組むのはしんどいので、裏の世界へ潜入します。それにはラプラス変換の公式集を使えばよいのです。裏の世界へ入ってみると、こはいかに・・・。微分方程式は、いやらしい導関数が消滅して、ふつうの四則演算で処理できる代数方程式に変わってしまっているではありませんか。しかも、その代数方程式で初期条件さえも一挙に片がつくのです。こんなうまい話がまたとあろうかと思われるくらいです。その代数方程式を解いてやると、もう、微分方程式は解けているのです。あとは、ラプラス逆変換の公式集を使って、表の世界へ復帰すればよいだけです。復帰してみると、そこには、がんこな微分方程式があわ雪のように融けて、初期条件を入れた特殊解だけが残っているのを見いだすことでしょう。(大村、同書、p155-156)

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補注 大村さんの易しく、けれど本質に迫る語りぶりは、微積でも健在である。多くの例題はすべて具体的なものだ。小学生の頃、算数でリンゴやミカンの個数と価格を計算したような具象的な世界である。微積は「変化と結果を知るテクニック」なのだから、これらの実生活からの例示はとても多くの知識と智恵を与えてくれる。「実生活の現象を取り扱うときに、非常にしばしば姿を見せる」数学を懇切に教えてもらえて楽しい。

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ヒッチコック風・めまいと恐怖の微積分のはなし
 が、実は、ひとつ、私には深刻な悩みが生じている。大村さんの例が、私にとって余りに生々しすぎるのである。「いくら高いところから落ちても(空気抵抗のために)臨界速度より速くはならない(大村、同書、下巻、p76)」など、具体的な挿絵の漫画付き。具体的に我が身で想像すると怖ろしくて頭の中で目が回る。大村さんは航空幕僚長だったぐらいだから、高いところは(少なくとも数学本の例題で語るぐらいでは)全く怖くないのである。ところが、私の高所恐怖症や閉所恐怖症(広場恐怖)といったらひどいのだ。
 かつて、数学書を読んでこのようなめまいを感じたのは、複素解析のコーシーの微分可能性の証明(一カ所で微分可能なら宇宙の果てまでどこまでいっても微分可能である・・これには目眩と大きな感動を覚えた)を分かったときだ。10年前のビジュアル複素解析の学習時は私は純粋な知的感動とともに学習を進められた。宇宙の中で一本の考える葦でいられたのだ。
 今回の目眩は久々、ヴィジュアル複素解析を考える葦、それ以来である。ところが、今度の大村本の微積では、我が身は、1/2g*sq(t)の距離を落下した後に地面(地球ではなくて、アスファルトの固い地面なのだ!)と激突してぺっちゃんこかつ粉々になる重い現実の人間である。目眩どころか、ヒッチコックばりの「めまい」の螺旋階段のぐるぐる揺れや「サイコ」で死の恐怖の絶叫の世界のうちに引き込まれそうだ。
 数学の勉強程度でこんな精神的緊張を感じたことがあるだろうか。歳とって、昔よりも死の恐怖を具体的に身に引き寄せ、無意識のうちに(無意識とは矛盾するが)頭脳が思考実験するようになっているためかもしれない。
 というわけで、大村本のような具体例の多い入門書は、何も怖くなかった青年時代(高校生や大学生)の頃に通読しておくべきだったと、昨今つくづく反省しているのである。今となってこの本を読むのは怖いので投げ出してしまいたいところだ。ところが大村さんの語りは面白く分かりやすい。死の恐怖ぐらいで目眩を感じて捨てるのは勇なきことだ。できるだけ早く読み通して、そしてこの怖さを早く忘れてしまいたいと思う。
 肝心な微積のことだけは忘れないでいたいのだが、数学を忘れて怖い話だけは忘れないといった積分結果になったらどうしようか。
 
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閑話休題、以下、大村本より引用。

これだけ容易に微分方程式が解けた理由は、この微分方程式が・・
f(v)dv=g(t)dt
の形をしていたからにほかなりません。左辺にはvの関数だけ、右辺にはtの関数だけというぐあいに、きちんと分類し、それぞれを別個に積分できたからです。こういう形に整理できる微分方程式を変数分離形の微分方程式といい、実生活の現象を取り扱うときに、非常にしばしば姿を見せるタイプです。(大村、同書、下巻、p88)

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