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薄明: 甲府市焼盡

2021年2月4日 木曜日 薄曇り(朝は晴れているのか曇っているのかわからないような薄曇り、雪は降っていない。)

太宰治 ちくま文庫版太宰治全集8 1989年(オリジナルの執筆年月は不明。『薄明』昭和21年11月、新紀元社刊に初めて収録される。)

・・注射がきいたのか、どうか、或いは自然に治る時機になっていたのか、その病院にかよって二日目の午後に眼があいた。  私はただやたらに、よかった、よかったを連発し、そうして早速、家の焼跡を見せにつれて行った。  「ね、お家が焼けちゃったろう?」  「ああ、焼けたね。」と子供は微笑している。(太宰、同書、p172)

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・・まさに、最悪の時期に襲来したのである。・・・(中略)・・・ざっと頭の真上から火の雨が降って来た。  「蒲団をかぶれ!」  私は妻に言って、自分も子供を背負ったまま蒲団をかぶって畑に伏した。直撃弾を受けたら痛いだろうなと思った。  直撃弾は、あたらなかった。蒲団をはねのけて上半身を起こしてみると、自分の身のまわりは火の海である。  「おい、起きて消せ! 消せ!」(太宰、同書、p164)

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2021年6月23日 水曜日 晴れ

お昼休みに「シャボン横丁さん」の朗読で「貨幣」を聴いた。https://www.youtube.com/watch?v=Cl5LLS2mY18

その中で、「東京から汽車で3,4時間で行ける小都会」・・葡萄酒が買えたり、葡萄酒のブランデーが飲めたり、ということなので、この「葡萄酒の闇屋」は甲府市のイメージかもしれない。この甲府焼盡「薄明」の経験がここに行かされているのかと思う。ここに出てくる酔いどれの大尉は、カチカチ山のタヌキさんの生まれ変わりのような人物であるが、この大尉の手から6枚の百円紙幣が赤ん坊の背中に渡るのである。『薄明』『カチカチ山』そしてこの『貨幣』、この3者を併せ読みすると面白い。

https://www.youtube.com/watch?v=Cl5LLS2mY18

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